昨年12月、日本皮膚科学会東京支部の学術大会に出席してきました。私自身、アトピー性皮膚炎と診断されて、医者に処方されるがままに使い続けたステロイド剤の依存症に陥り、重度の前身アトピー患者となりました。悩んだ挙句、壮絶なステロイド離脱を決行したのが、ちょうど20年前の4月1日。その後、完治を目指してオレゴン州にある自然医学大学に入学しました。研究文献を読み漁り、自分自身の体で様々な人体実験を行って、ついに原因が、なんのことはないカビ感染だと解明したのです。ちょうど同時期に、広島大学医学部がアトピー性皮膚炎における汗アレルギーの原因物質が皮膚常在菌の一種、マラセチアというカビであると発表しました。欧米でも近年の目覚ましいDNA解析技術のおかげで、皮膚常在菌の種類がどんどん特定され始め、その存在とバランスこそが皮膚の健康に重要な役割を果たしていることが解明されてきました。つまり、今までは表皮の外側の角質層と皮脂が皮膚バリアを作っている考えられていたのが、実はその上に皮脂や汗を食べて生息している微生物がいて、より多くの善玉菌が生息していると健全な皮膚バリアが作られるということが分かってきたのです。人体の常在菌の研究「Human Microbiome」は、今、世界で最も注目されている分野の一つであり、皮膚や胃腸だけでなく、がん、泌尿器、生殖器など様々な分野において、今までの治療のあり方を革新するゲームチェンジャーとも目されています。
皮膚科学会は、なぜ変わらない?
ステロイド離脱を乗り越えて20年。その間の新たな医学の解明で、アトピー性皮膚炎の治療もさぞ進化したことだろう、そう期待して、日本皮膚科学会に参加してみると、とんでもない、日本皮膚科学会の標準治療は、真逆の方向に進化していたのです。
日本皮膚科学会の標準アトピー治療は、
- 皮膚の炎症が起こる前にステロイド、タクロリムスをどんどん使って炎症を軽減する
- 皮膚を保護するために、保湿剤をどんどん使う
- それでも効かない患者には、新薬、デュピルマブを皮下注射して炎症を抑える
学会で発表されていた教授の方々は、素晴らしい頭脳の方ばかり。皮膚の構造や炎症のメカニズム、遺伝子異常など詳細に研究されていて、大変勉強になりました。しかし、これだけ皮膚を知り尽くしていながら、なぜ、カビ感染を疑わないのか、なぜ、この治療法に帰着するのか不思議でなりません。
2018年4月から一般診療が開始されたデュピルマブという薬剤は、私たちの皮膚が作るIL-4 とIL-13という炎症タンパク質を阻害する薬です。アトピー患者の皮膚と健康な皮膚を比較したところ、アトピー患者の皮膚にIL-4 とIL-13が多く見られた。これらを阻害すれば炎症が起こらなくなりアトピーが治る。。。という発想。あまりにも短絡的だと感じるのは私だけでしょうか
炎症タンパク質は自己免疫の一環です。皮膚がIL-4 とIL-13を作っているのには、何らかの理由があるからだとは、なぜ考えないのでしょうか?IL-4 とIL-13はアレルギーと関係してます。マラセチア真菌がIL-4 とIL-13の生成を促すことを確認する研究発表もあります。広島大学医学部が発表したマラセチアに対するアレルギー反応という研究成果と一致していますよね。。。
1953年に認可されたステロイド剤は、炎症を抑える免疫抑制剤。1999年に認可されたタクロリムスは、臓器移植を受けた患者の拒絶反応を抑制する免疫抑制剤。去年認可されたデュピルマブもまた免疫抑制剤。なぜ、皮膚科学会は患者の免疫を抑制して炎症を抑える事に終始するのでしょうか?いくら免疫を抑制して炎症を抑えたって、原因を取り除かなければ皮膚は炎症反応をやめません。皮膚科学会のアトピー治療は、
皮膚のカビ感染→炎症→免疫抑制剤→免疫反応の鎮静(症状の一次的な改善)→カビが増殖→体の免疫による炎症の悪化→さらに強い免疫抑制剤→アトピー症状の重症化→患者の免疫抑制剤への薬依存。
この悪循環のために、次々に製薬会社が新しい免疫抑制剤を開発し続けている。このことに皮膚科学会は疑問を感じないのでしょうか?
ちなみに、新薬のデュピルマブは、1本あたり81,640円で、3割負担でも24,492円。2週間おきに注射するので、ひと月5万円の患者負担という大変高価な薬です。
免疫を抑制しないで!
私たちは地球というエコシステムに生きています。動植物や目に見えない微生物たちと、時に支え合い、時に敵対し、共存して暮らしているのです。地球上には不毛な場所など存在せず、私たちの皮膚表面にもカーペットのように微生物が生息しています。それでも、私たちがそれらの微生物に感染しないのは、私たちの体に備わった免疫が24時間稼働しているからなのです。
皮膚の赤み、腫れ、化膿、かゆみ、カサカサ。これらの症状すべて、体の免疫反応で、多くの場合、感染が原因です。寝不足やストレス、栄養の乱れ、甘いものの食べ過ぎ、タバコやお酒などで免疫機能が下がると、皮膚に生息している微生物が皮膚内に侵入してきます。健康な食と生活習慣で健康な心身を整え、体の免疫機能が十分に働くように日々心がけることが大変重要です。また、毎日、石鹸でゴシゴシ洗い過ぎたり、熱いお風呂につかリすぎたりするのも、皮脂を取り過ぎ乾燥させて皮膚バリアを壊し、菌やカビの侵入を許してしまいます。皮膚の健康のためには、善玉菌のえさになる自分の皮脂と汗を作ることが大切なのです。どんなに高級な保湿剤でも善玉菌は育たないのです。お風呂は毎日入らず、石鹸は極力使わないほうが、実は皮膚は健康に保たれるのです。
そう考えると、ステロイドやタクロリムス、デュピルマブで免疫を抑制することが、どれほど間違っていった治療であるか、どれほど恐ろしいことなのか。使い続ければ、行き着く先は生ける屍です。
皮膚に生息するカビがアトピー性皮膚炎に関与していることを確認する研究文献は、すでに多数存在しています。今後も加速度的にDNA解析が進み、皮膚常在菌の全容が解明する日は近いのです。にも関わらず、2日間に渡って、複数会場で総勢100人にも及ぶ講師陣による講義が行われた皮膚科学会東京支部学術大会で、皮膚常在菌の講義をされたのは、ミシガン大学医学部で研究されていた先生一人だけ。しかも時間にして30分ほどのおさわり程度でした。いつまでも免疫抑制の治療ばかりに専念する日本皮膚科学会は、全てが解明されるXデーをどう迎えるのだろうか。(夕焼け新聞2019年2月号掲載)