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風邪予防に予防接種はマルか、バツか? - Dr. Chikako Harper

風邪予防に予防接種はマルか、バツか?

August 9, 2023

三寒四温の今日この頃、風邪の季節の到来です。この時期、よく質問を受けるのが?「風邪の予防注射をした方が良いですか?」答えは「自分の免疫がしっかりしていれば要いりません」

私たちは、地球の自然界というエコスステム(生態系)に住んでいます。つまり自然と共存し、24時間、365日、休むことなく他生物と小競り合いを繰り返しているのです。頭脳が発達した人間は、道具を使い農耕や家畜で餌を確保し、冷凍などの技術で長期保存に成功しました。ダムを作り水道を配備し、今や蛇口をひねれば水が出てくる。そして巨大な群れを成し役割分担して共同生活することで、他動物から襲われることもなくなったのです。

すっかり暮らしやすくなり、自然から隔離された生活を送る私たち人間は、無敵なのでしょうか?

確かに目に見える敵に襲われることは滅多になくなりましたが、私たちは、ウイルスや菌、カビ、寄生虫など、目に見えない敵に常に包囲されています。その見えない敵と24時間、365日、休むことなく戦っているのが、私たちの体に備わった免疫システムなのです。

免疫の主役は白血球です。身体中に張り巡らされたリンパ管と血管を、警察官のごとく巡回して、外敵が侵入していないか、常に見張っています。白血球にはいろいろな種類があり、それぞれが役割を担い、複雑なフォーメーションを組んで巧妙に侵入者を撃墜します。コミュニティーを作って役割分担し助け合って暮らす社会システムが体内にも存在し、システムがしっかりしていれば病気になりません。

さて、風邪の話に戻りましょう。風邪の原因はウイルスです。空中に舞う風邪ウイルスは、鼻、喉、気管支の粘膜に付着して体内への侵入を試みます。パラシュートで敵軍が降りてくるイメージですね。それを各白血球がフォーメーションを組んで襲撃するので、戦場化した鼻、喉、気管支の粘膜が赤く腫れて熱を持ち、リンパ液が流れ、痰が絡み、咳が出ます。戦闘が長期化すればするほど、症状も長引きます。こうした風邪の症状は、免疫活動の一環なので風邪薬で症状を抑えるなどすると、さらに長引かせることになります。

風邪は、予防接種で防げるか?

人間の身体には、菌やウィルスなどの病原体が体内に侵入すると、抗体と呼ばれる免疫物質を作るメモリーB細胞という白血球が存在します。ちょうど、図書館や標本室のような役割をしていて、過去に体内に侵入してきた病原菌の破片を記憶しています。一度、抗体が作られると、同じ病原体が再侵入した際には、このメモリーB細胞が抗体を大量に放出し、他の白血球に知らせて、効率よく感染を防いでくれるのです。予防接種とは、この免疫システムを利用して、菌やウィルスから製剤を作り、血中に注入して人工的に体内に抗体を作らせ、感染を未然に防ごうというもの。この方法により天然痘やポリオなどの感染は世界的に激減しました。ところが、風邪ウイルスの予防接種には3つ問題点があります。まず、インフルエンザの血清型が非常に多く、どのウィルスが猛威を振るうか予想がつきにくいこと。悪性で感染力が強いインフルエンザAは、現在確認されているだけでも144型存在しています。そして鶏の卵を使って培養するワクチンの生産・流通には少なくとも6ヶ月を必要とします。つまり、インフルエンザが流行る6ヶ月も前に、多数ある血清型の中からどのウィルスが猛威を振るうか予想を立てて生産を見切り発車するわけで、予想が的中しなければ予防接種は効きません。2つ目の問題はウィルスの持つ変異能力です。病原体には変異して免疫の反撃をかわす能力があり、インフルエンザのウィルスの変異は特に早く、生産・流通に6ヶ月かけている間にどんどん変異してしまうのです。変貌したウィルスに予防接種はほとんど効き目はありません。3つ目の問題は、注射によるワクチンは血中に存在する抗体IgGを作ることができても、粘膜に存在するIgAを作ることはできません。ウイルスは鼻や喉、気管の粘膜に侵入してくるので、粘膜IgAが作れない予防接種は大して役に立ちません。

結局、一番頼りになるのは、自己免疫

毎日の手洗いとうがいを徹底して、身体を冷やさないこと。ストレスを溜めないようにして、十分な睡眠で心身を休息させること。身体を温める根菜と魚中心の食事にし、免疫を下げる砂糖やアルコールは控えましょう。それでも風邪をひいてしまったら?実はそれも良いのです。今期の新型ウイルスの資料を入手して、メモリーB細胞の資料室を充実させているのだ。。。。と観念し、身体を休め、ビタミンC、A、亜鉛、水分を補給し、自己免疫が最大限の力を発揮できるよう応援しましょう。

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